秋の豊饒
         〜789女子高生シリーズ

         *YUN様砂幻様のところで連載されておいでの
          789女子高生設定をお借りしました。
 
 



最近は輸入とそれからハウス栽培の技術も向上してのこと、
秋と言えばと限定される作物も減りつつあって。

 「それでも柿と栗だけは、国産の瑞々しいのが一番ですよね。」
 「……。」
 「っていうか、
  柿はさすがに外国から輸入はしてないんじゃないかなぁ。」

明日は“十五夜”とあって、月見団子の作り方をお浚いしましょうと、
毎度お馴染み『八百萬屋』の厨房へ、
学校からの寄り道しておいでの三華様たちで。
つか、秋は行事が多い彼女たちのはずじゃあなかったかと、
学園祭への和菓子の発注をやはり受けておいでの五郎兵衛殿が、
この時分に何を暢気な息抜きだろかと、首を傾げたようだけれど。

 「まま、体育祭のほうは。」
 「ええ。準備と言っても当日頑張るものが大半ですしね。」
 「……。(頷、頷)」

まずはのお祭り第一弾である“体育祭”でも、
注目浴びる大活躍が期待されておいでの彼女らではあれど。
当日までの日々を忙しく駆け回るのは、主に準備委員会の方々だし。
練習が要りようなのは、
常勝が義務づけられておいでの陸上部や、その他 運動部の方々に、
昼休憩に披露するダンスやマスゲームの
振り付けの総合練習がある一年生たちくらいのもの。

 「チアフラッグの方は、
  ブラスバンドの皆様との調整もありますしね。」

 「そうそう、毎日という訳でもありませんし。
  あ、久蔵殿、聖篭は熱くて危ないから気をつけてね?」

 「……。(頷、頷)」

この頃では随分と物慣れて来た白い手が三組、
店舗用厨房のステンレス製の作業台の上、
大きなボウルや大きなすり鉢との格闘にはしゃいでおいで。
熱湯を加えた上新粉を練り、
蒸し器で蒸してからすり鉢で搗いて水に取り、
温かいうちにまた捏ねて。
ちぎって丸めれば出来上がり。

 「カタクリ粉を加えるという話も聞きますが。」

 「うん、最初の段階で砂糖と同じ分量、
  粉が150gなら大サジ1杯半かな?
  一緒に入れるの。」

もちもちのになるから、みたらし団子とかにするならそっちかな?
ゴロさんが言ってた…と付け足すときに、
心なし 微妙に視線が泳ぐのが。
日頃のさっぱりさばさばしておいでなのと好対照で
何とも可愛らしい平八さんだったりし。

 あと、白玉粉を使えば、蒸す工程がなくなって茹でるだけで済むけど、
 しっとりもちもち食感がいいなら、手間はかかっても上新粉かな?と。

本来の得手はPC操作や仕掛けの多い装備品作りだが、
大好きな五郎兵衛さんの手仕事を、
ぴっとりくっついて眺めるうちに覚えたあれこれ、
お料理にお菓子作りにという方面でも
めきめきと腕を上げておいでのひなげしさんなのへ。

 こちら、自分が食べたいというのとそれから

もしかして逢う時間や機会が作れるものならば、
その折に食べさせてあげたい、
上手だなと感心されたいお人がいるというヲトメ心から、
どうか教えてと頼って来たのが、
お友達の白百合さんこと七郎次さんと、紅ばらさんこと久蔵殿。

 「おおお、まだ熱いかな。」
 「〜〜〜っ。//////」

お二人ともそれなりのお家に育っておいでなので、
何ならお抱えのシェフ殿から教わってもいいところだろにと、
以前にも平八が訊いたことがあったのだけれど、

 『そんなのダメですよお。』
 『……。(頷、頷)』
 『? なんでです?』

 だって、そんなしたら
 近々“お持たせデート”だなとか、
 母様や父様へ筒抜けじゃないですか。

 ……。(頷、頷)

 あ・そっか。

ちなみに彼女らの場合、親御にばれるのは、
恥ずかしいというよりも
進展だ何だ聞かれやしないかという空気になるのが
面倒だからイヤなんだそうで。

 “それって“ヲトメ心”なのかなぁ?”(う〜ん微妙)

冒頭の話題、梨や桃と言ったらコンポートも美味しいですよねと、
団子とは微妙に逸れてる話に沸いていたのは、
実は、洋風デザートも作る気満々の彼女らだからであり。
この後、ご近所の青果店へ素材を見繕いにお出掛けする予定。
白ワインとグラニュー糖で煮詰め、
シナモンで風味づけをして冷やした甘いのを、
アイスやクレープ、ヨーグルトに添えて食べる彼女らだが、

 『あのな? 兵庫が…』
 『あら、シャンパンに合うと仰せだったって?』

相変わらずの母性の奇跡、
それでなくとも寡黙なうえに、
こういう話は照れちゃってますます口が重くなる紅ばら様から。
視線の揺らぎや唇の咬みしめようから、
いともたやすく引き出せちゃう白百合様の通詞によれば。
サワー系のアルコールに瑞々しいのが案外と合うと、
久蔵殿が懐いておいでのお医者のせんせえが言ってたらしく。

 『…って、それってどんなシーンで聞いたのかなぁ?』
 『あ、そっか。
  まさかにお茶の間で情報番組見ててって風じゃないよねぇ。』

ハイソなお宅だからというよりも、
そういう時間帯にどちらかのお宅でなぞと、
なかなかお顔を合わせられない彼らなその上、
自宅で逢っているならば
勉強せよという監視体制にある場合が大半だからと
あとの二人もようよう知っており。

 『〜〜〜。/////////』

まあ、わざわざ聞かずとも、
バレエのレッスンの帰りにでも、
どっかに寄ってお茶でもしたおりのことだろと。
そこは想像もしやすいネタだし、

 『ああ、ごめんごめん。
  からかったんじゃないからね?』

 『そうですよ、
  アタシなんて冷やかされるネタすらないのに。』

 『〜〜〜〜。』

 『あ、いやいや、気にしないで。』

つか、勘兵衛様への闇討ちだけはやめてね、久蔵殿…と。
甘い話のはずが、何だかきな臭い気配まで立ったのを恐れたか。
ひなげしさんのお部屋にうっかり放り出してたスマホへと、
それぞれの想い人らから、
明日はちょっとだけ逢えないものかというメールが届いていたそうで。

 これもまた、秋の初めのちょっとした奇跡。
 甘い甘いスィーツを添えにして、
 明日はいい月が観られるといいですねvv




     〜なしくずし・どっとはらい〜  13.09.18.


  *もはや奇跡と言われとります、勘兵衛様。
   まあ、こ〜んな可愛い、しかもよく出来たカノ女を
   すげなくも放り出してるんだもの。
   久蔵殿どころじゃあない、
   世の男性諸氏からだって恨まれるってもんですよ。

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